春を往く

ホーム フォーラム 詩の苗木 春を往く

  • このトピックには0件の返信、1人の参加者があり、最後にCeceileにより1年、 3ヶ月前に更新されました。
1件の投稿を表示中 - 1 - 1件目 (全1件中)
  • 投稿者
    投稿
  • #105
    Ceceile
    参加者

    動脈みたいに空を這う木の枝に
    花という名の血が通う
    生ぬるく吹きすさぶ風に裏返るビニール傘
    記憶さえ飛んでいってしまいそうな夜

    歩き出した足は
    目的もないまま ただ止まらずに

    生まれてから今まで
    この口は何度 「寂しい」と呟いただろう
    それは鋭利なナイフで
    声が育んだナイーヴ
    口の中は血だらけだ

    家族がいて 友達がいて
    だけど絶対に埋まらない孤独が
    この魂の中心を貫いている

    名前を呼んだ 声にならない声で
    まだ知らぬ君の名を
    春の嵐の中 叫んだ
    夢みているんだ
    君がこの孤独を引き抜いて 微笑んでくれる世界

    自分勝手に巡り来る春が乱暴に
    ひとつずつ落としていく 標
    この手足も伸びて
    この心も世界の眩しさを知って
    気付きだす 君の本当の姿
    築いてく 君になるための強さ

    南風に混じり吹く北風の中
    壊れた傘を放り投げて
    抱え続けた幻も捨てて
    歩く足の行き先が今 わかったんだ

    「やあ やっと逢えたね」

    自分を救うのは自分自身だ
    孤独の芯にこそ答えは宿る
    捜し求めていた君を抱きしめながら僕は
    これからの日々とよろこびの歌を口ずさんだ

1件の投稿を表示中 - 1 - 1件目 (全1件中)
  • このトピックに返信するにはログインが必要です。
PAGE TOP